トンボ
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池岸帯の植生と出現するトンボ(成虫)の種数(長田ほか、1998、1991) 桜井善雄,1991.『水辺の環境学』 (新日本出版社)より転載
これまでに兵庫県では約100種のトンボが記録されています。トンボはその生息場所の違いから、止水性と流水性の大きく二つのグループに分けることができます。ため池で見られるのは止水性のトンボで、約60種がこれにあたります。
ため池は豊かなトンボ相を維持していくために必要な水辺環境を提供しています。中でも、草原や林と隣接する植生豊かなため池では、たくさんの種類のトンボが見られます。
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多くの種類のトンボが出現する植生豊かなため池
トンボは幼虫(ヤゴ)の時代を水中で過ごし、成虫はエサ場や休息場所として池とそのまわりの草原や樹林を利用します。また、肉食のために多くのエサとなる小動物が必要です。これらのことから、トンボは自然環境の豊かさを知るひとつのバロメーターにもなっています。
水草はトンボの生活にとって重要な役割を果たしています。ヤゴでは水草につかまって生活したり、羽化の際に抽水植物を利用するものが多く、成虫では水草帯が摂食や繁殖の場となっており、その植物組織内に産卵するものも多数あります。
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夏から秋にかけて見られるタイワンウチワヤンマ
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シオカラトンボの羽化
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メスを待つショウジョウトンボのオス
ため池の埋め立てや都市化の進展による生息環境の悪化のほか、水質汚濁の進行や池の改修工事等による水生植物群落の衰退が各地でおこっており、これらはため池のトンボ相にも大きな打撃を与えています。植生豊かなため池に生息しているチョウトンボやアオヤンマなどは、すっかりその数を減じてしまいました。
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黒っぽく輝く翅が特徴のチョウトンボ
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無事に羽化を終えたアオヤンマ